書評
肘実践講座
よくわかる野球肘  離断性骨軟骨炎

 「肘実践講座」の第1巻として刊行されたのがこの「離断性骨軟骨炎」。少年野球で大きな問題になっている肘の障害。帯に2つの方針が示されている。1つは、「いかに医療技術が進んでも、病期が進んでからでは敗戦処理の手術しかできません。検診で早期発見すれば、保存的治療で完治できます」。つまり、検診による早期発見の重要性と早期での保存療法の有効性を説く。そして、「選手にヒトとして向き合う。『野球選手の肘を診る』のではなく、『肘に障害を持つ野球選手を診る』ことを目標にしました」。患部しか診ないと言われることが多いが、医療の原点に立ち返ろうという意志が読み取れる。
 徳島大学グループは、30年以上前の1981年から野球肘の現場での検診を続けてきた。また、そのころから少年野球の肘の障害に対して警鐘を鳴らしてきたが、なかなか社会に浸透しなかった。一方で、近年は超音波画像診断装置の進歩によりその精度も飛躍的に高まっている。徳島大学グループの精神は全国に広がり、今では多くの地域で少年野球の検診が行われるようになっている。
 この本はユニークなスタンスで書かれている。しかし、「この本は奇をてらったフィクションや独善的なハウツー本ではなく、科学的事実に裏付けられた日常臨床の教科書であり、実用書です」と編集者一同が記している。第2章「先人に学ぶ 離断性骨軟骨炎のレビュー」もこの編集スタンスをよく示している。多くの人の尽力があっても、まだ少年野球の肘の障害は減らない。診断・治療はもとより、何より予防が重要で、そのために何が必要かじっくりと考えることになる。医療関係者はもちろん、患者の家族、指導者にも読んでほしい本であり、スポーツ医学の本の王道をいく内容だと思う。巻頭「少年野球の座右の書に」と題し、王貞治氏(財団法人世界少年野球推進財団理事長)が文章を寄せているのも本書らしい。(清家)


離断性骨軟骨炎
編集企画:岩瀬毅信、柏口新二、松浦哲也
B5判 272頁
7,500円+税
全日本病院出版会
2013年4月15日刊

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